訴状を受け取らなければ裁判は進まないのか?

「昔、裁判所から郵便物が届いた記憶があるけれど、無視してしまった。自分は裁判に出ていないから、判決なんて出ていないはずだ。」
このようなご相談を受けることが少なくありません。しかし、これは大きな誤解です。実際には、本人が訴状を直接受け取っていなくても、裁判は進行して判決が出る場合があるのです。今回は、この仕組みについて分かりやすく解説します。
裁判の始まりは「訴状の送達」から
裁判は、原告(お金を貸した側や請求する側)が裁判所に訴えを起こし、その内容を被告(お金を借りた側など)に伝えるところから始まります。そのため、まず最初に必要なのが「訴状の送達」です。これは簡単にいえば「あなたに対して裁判を起こしましたよ」という正式な通知です。
通常、訴状は被告の住所、居所、勤務先などに郵送されます。受け取れば裁判が正式にスタートし、答弁書を提出したり、裁判に出席して反論したりする機会が与えられます。
しかし問題は、「訴状を受け取らない」「受け取れない」といった場合です。
受け取らなくても進む?二つの送達方法
1.付郵便送達(書留郵便によるみなし送達)
訴状が届いても、わざと居留守を使ったり、受け取りを拒んだりする人もいます。このような場合に裁判所が用いるのが「付郵便送達」という方法です。
これは、相手がその住所に住んでいることが明らかであるにもかかわらず受け取らないときに、郵便を発送しただけで「届いたものとみなす」制度です。つまり、本人が実際に手に取らなくても、法律上は訴状が送られたことになり、裁判が進んでしまいます。
2.公示送達
もっと厄介なのは、引っ越しを繰り返したり、住民票を移さなかったりして、居場所が全く分からないケースです。この場合、裁判所は「公示送達」という手段を使います。
裁判所の掲示板に「この人に対して裁判を起こしました。裁判所に来れば書類を受け取れます」という旨を掲示し、2週間が経過すれば送達があったものと扱われます。もちろん本人が見に来なくても効力は発生します。
「知らない間に判決が確定していた」という現実
こうした送達方法があるため、訴状を実際に手にしていなくても裁判は進み、最終的に判決が下されることがあります。そして、その判決が確定してしまうと、債権者(貸した側)は強制執行の手続きを取れるようになります。たとえば、銀行口座や給与が差し押さえられることも現実に起こり得ます。
「受け取らなかったから大丈夫」と思っていた人が、ある日突然、給料の差押通知を会社から渡されて初めて状況を知る――こうしたケースは決して珍しくありません。
消滅時効への影響にも注意!
さらに注意すべきなのが「消滅時効」との関係です。通常、借金や請求権は一定期間(5年など)で消滅時効にかかります。しかし、裁判で判決が確定すると、その効力は非常に強くなり、消滅時効の期間は「10年」に延びてしまいます。
つまり、訴状を受け取らなかったがために裁判が進んでしまい、知らない間に判決が確定してしまうと、逆に時効の援用が難しくなり、長期間支払い義務が残る可能性があるのです。
まとめ ― 無視は絶対にNG!
訴状を受け取らなければ裁判は進まない、と考えるのは誤りです。
- 居留守や受取拒否でも「付郵便送達」で送達済みと扱われる
- 行方不明状態なら「公示送達」で送達済みと扱われる
- 実際に受け取らなくても裁判は進み、判決が出ることがある
- 判決が確定すると消滅時効は10年になり、差押えのリスクもある
もし裁判所からの書類が届いた場合、決して放置せず、内容を確認したうえで早めに専門家に相談することが大切です。「無視しておけば何とかなる」という考えは危険であり、後々大きな不利益を招きかねません。
借金や督促、裁判所からの書類に不安を感じたら、早めに専門家にご相談ください。状況に応じた正しい対応を取ることが、あなたの生活を守る最善の方法です。


